手作業翻訳版 - 総合トップ
日本語 English 中文 한국어
精神疾患の定義 : 精神病理学・精神疾患研究 : 岩崎純一のウェブサイト
サイトレイアウト切り替え
  • 主にデスクトップ向けのレイアウトに切り替える
  • 主にラップトップ向けのレイアウトに切り替える
  • 主にタブレット向けのレイアウトに切り替える
  • 主にスマートフォン向けのレイアウトに切り替える
  • 主に旧型モバイル向けのレイアウトに切り替える
ページ内移動
※ スマホ、ケータイ向けレイアウトの初期設定では、「▼現在のページの本文」タブのみ開いております。

精神疾患の定義

DSM-5 2013年7月15日
 アメリカ精神医学会が2013年5月に新たなDSM(バージョン5)を発表したため、以下の情報には最新ではない箇所があります。
 訳語がまだ議論されている段階ですので、このサイトの改訂もまだ先になる予定です。

↓↓↓

2014年5月28日
 訳語の指針が日本精神神経学会により発表されました。私個人としては不満な点もあるため、私のサイトは今後数年間は書き換えずにおこうと思います。以下のガイドラインや私が書いたブログなどをご参考に、適宜読み替えて下さいますようお願い致します。

DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン(日本精神神経学会)
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=75

「アスペルガー症候群」の廃止や「学習障害」などの名称変更で思うこと(私のブログ記事)
http://iwasaki-ningengaku.sblo.jp/article/98444468.html



 2006年6月10日 執筆

■ここでは、精神疾患に関する日本語の用語の定義の解説をします。

 まず、結論から言うと、全ての日本人にとって「正しい」精神疾患用語(の翻訳語)というものは存在しないと見るべきでしょう。

 第一に、以下に見るように、学者・医師の主義・主張によっても用語の使い方が違う上、世界保健機関が主導する世界中の精神疾患の統一的な統計方法に追従するか、現在の精神医学・精神医療を主導する米国の精神医学・精神医療現場や米国人の精神疾患の都合を優先するか、米国の製薬会社の利益を優先するか、日本の精神医学の都合や製薬会社の利益を優先するか、大多数の一般国民の俗語に合わせるか否か(「ノイローゼ」や「ヒステリー」の医学的定義と俗語表現との齟齬などが例)によっても、全く違ってきます。

 第二に、日本語で書かれたほぼ全ての精神疾患用語は翻訳語であって、例えば、“disorder”と“disease”のいずれもが、時と場合と主義・主張によって、「疾患、疾病、障害、症、症状、症候、病、病理、病変、病患、病気、病状、病態、阻害、故障」などと様々に翻訳されてきたため、何が「正しい日本語」かを追究すること自体が不可能です。

 しばしば、「“disorder”は“疾患”ではない。“障害”と訳すべきだ。しかも、“障がい”とひらがなで柔らかく書くべきだ。そうしないと、病気でないものが病気とされ、差別につながる。」と強硬に主張する方々がいます。しかし、残念ながらこのような方々は、日本の法令どころか、日本精神神経学会までもが、DSMなどの各項目を現在でも「病名」や「病理名」、「疾患名」と呼称、表記することが多いのをご存知ないか、人間の自然言語や日本語・国語の歴史についての教養に乏しい方々なのだと思います。そのように呼称、表記する精神神経学関係者は、差別のためにそうしているわけでもないのです。

(2014年5月28日 追記:まさしく、DSM-5に至っても「病名」という呼称・表記が見られることは、上述のガイドラインの通り。)

 本来、“disorder”は「疾患」や「病理」どころか、「障害」でさえありません。「宇宙や人間の秩序・道理・規律(order)の欠落・欠損・不履行(dis)」と訳すべき単語であり、西洋白人種の精神病理学者たちが生み出した対人認識の型式です。ですから、日本語でどのように翻訳しても、厳密には不正解ですし、近い概念に翻訳できさえすれば、それはそれで正解なのです。

 訳語が様々であっても原典の原語が一つであれば、それは本来一つの意味概念として記述されたのであり、訳語の不統一は、翻訳の過程で翻訳国の文化性や民族性や主義・主張においては原典の原語が大雑把すぎると判断されたことを意味します。

 逆に、同じ訳語であっても原典の原語が異なれば、意味概念が異なるものとして読解すべきなのであり、訳語の統一は、翻訳国の文化性や民族性や主義・主張においては原典の原語ほどの使い分けは不要であると判断されたことを意味します。

 本来は、アメリカが定めた精神疾患分類はアメリカ英語で、ドイツが定めた精神疾患分類はドイツ語で、アフリカの部族Aが定めた精神疾患分類があったとすればA語で読み書きするのが、正しいと言えば正しいことになります。

 しかし、それは事実上不可能であるので、母国語(日本語)に翻訳して記述することになります。このような場合、筆者・著者自身が「自分は、日本が近代医学を輸入し始めて以降のどの時代のどの用語の使われ方に従って(使われ方を好みとして)文章を書いているか」を表明することのほうが大切です。表明していない限り、読者・第三者がその人の医学論文や著書の文章を読むことができない(話の内容をつかめない)ことになってしまいます。

 私の場合は、主に「星マーク(★)」を付した用語と概念とを好んで採用し、「精神及び行動の障害の研究」の各ページを書いています。

●精神疾患:Mental disorder / Mental disease

★(1) 精神病、精神障害、気分障害、不安障害、神経症性障害、心身症性障害、行動の障害、性関連障害、人格障害、知的障害、発達障害などの便宜的な総称、全称。
・・・DSMのタイトルがdisorderを採用。日本では、DSM-IV以降のdisorderが「疾患」と訳される。私のサイトでも、総称したいときに便宜的に「疾患」を用いている。
★(2) 精神病(統合失調症、妄想性障害が主。DSM-IV以降は精神病性障害)と精神障害の総称。
・・・ICD-10が総タイトルにdisease、第五章のタイトルにdisorderを採用。日本ではこれが「疾患」の意味で「障害」と訳される。この場合、「精神障害」とは「精神疾患」に同義である。
(3) (1)や(2)の各障害を疾患、病理と見た訳語。
・・・日本の精神医学がdiseaseやdisorderの訳語として便宜的に採用。この場合、「疾患」と「障害」とは区別される。

●精神障害:Mental disorder

★(1) 精神疾患の各項に同義。
(2) 精神疾患(1)のうち行動の障害を除く障害。
・・・ICD-10が第五章のタイトルに便宜的に採用。
(3) 日本の精神医学における精神疾患の旧概念で、「疾患、病理であるものをそうと認めず、旧来の障害の扱いとしたもの」として批判的に扱われ忌避される概念。
・・・DSM-III、DSM-III-Rの訳語として採用。DSM-IV、DSM-IV-TRは、前文においてdisease(疾患)ではなくdisorder(障害)を採用することを宣言し、かつ「精神障害は定義不可能である」と述べている。しかし、日本においては、訳語が逆に「疾患」に改められた。すなわち、日本語で忠実に言うならば、DSM-IVは旧来の「障害」を「疾患」とすることを宣言した。
★(4) 統合失調症、妄想性障害を主とする重度の精神病。気分障害、不安障害、神経症性障害などを除く。
★(5) 精神病に代わる概念で、統合失調症や妄想性障害に重度の気分障害などを加えたもの。
・・・DSMがIV以降に積極的に採用。

※「疾患」と「障害」の両語について、それらが同じ語の訳語である場合は同義であり、原語が異なる場合は異なる意味概念であると見るべきである。また、同じ「障害」であっても、その原語がdisorderかdiseaseかによって意味概念が異なるので、見分けなければならない。

●精神病:Psychosis / Mental disorder / Mental disease / Mental illness

(1) 精神疾患(1)に含まれるあらゆる症例の総称。・・・シュナイダーが採用した概念に近い。
★(2) 統合失調症、躁うつ病を主とする内因性精神疾患。
(3) 統合失調症、躁うつ病、てんかんを主とする精神疾患。・・・クレペリンやヤスパースが採用。
★(4) 統合失調症、妄想性障害を主とする重度の精神障害。気分障害、不安障害、神経症性障害などを除く。
★(5) 重度の精神疾患や精神障害の総称。統合失調症などの内因性精神病以外に、重度の心因性精神病(気分障害、不安障害、神経症性障害)や外因性精神病の一部を含む。
(6) 現在では「病」の表記・概念が批判・忌避され、「障害」や「疾患」への表記・概念の変更が望まれるものとしての(3)や(4)。
・・・DSMがIV以降に積極的に採用。

※ シュナイダー、クレペリン、ヤスパースは、現在では精神病に含まれないことが「判明」している精神疾患までをも作為的に「精神病」の扱いとしたのではなく、精神疾患の結果としての「症状の内容」よりも精神疾患の成り立ちとしての「症状の形態」を重視する限り、それらを精神病とせざるを得なかったのである。すなわち、重度の神経症性障害やてんかんは、その成り立ち方を見る限り、当時においては「精神病」であった。

●内因性と外因性(外因性:身体因性と心因性)

(1) 精神疾患、精神障害の各項の発症原因の二大分類。内因性精神障害とは、主に外部環境の影響なくして遺伝的、素質的要因により生じる精神疾患。外因性精神障害とは、器質的変化、病気、感染、外傷、中毒、ストレス、ショックなどを契機とする身体(主に脳)や精神の異変により生じる精神疾患。さらに外因性は、身体因性と心因性とに二大分類され、身体因性は器質的変化、病気、感染、外傷、中毒などによるものを、心因性はストレス、ショックなどによるものを指す。
 また、原因不明の精神疾患は内因性精神障害に含まれる。
(2) 主に狭義の精神病のみに用いられることが多い。精神病の(5)を中心に用いられ、軽度、中等度の気分障害、不安障害、神経症性障害については用いられない場合がそれである。ただし事実上、この場合も、これら軽度、中等度の精神疾患は心因である。
(3) 精神疾患について要因よりも症状(結果)を操作主義的に分類するために、DSM-IV以降に放棄された概念。

●内因性と外因性(身体因性)と心因性

★(1) 精神疾患、精神障害の各項の発症原因の三大分類。この場合、上記の二大分類の身体因性を外因性と呼ぶ。
 また、原因不明の精神障害は内因性精神障害に含まれる。
(2)と(3)は、上記の二大分類に同じ。

●内因性精神障害と外因性(身体因性)精神障害と心因性精神障害の例(上記の三大分類の場合。)

 ▼内因性精神障害: 精神分裂病(統合失調症)、躁うつ病(双極性障害)
 ・・・最も狭義の場合、精神病(2)にほぼ該当する。

 ▼外因性精神障害: 痴呆(認知症)、アルコール依存症、薬物依存症、てんかん、頭部外傷などによる精神病、外因性うつ病(膠原病、糖尿病などによるうつ病)
 ・・・現在のICD-10のF00~F19にてんかんを加えたものにほぼ該当する。

 ▼心因性精神障害: 反応性うつ病、不安神経症、強迫神経症、ノイローゼ

 ▼あえてこれら旧来の三大分類を採用する場合であっても、現在では精神障害でないとされる障害:
  ▽てんかん: どの精神障害でもないとされる。
  ▽単極性のうつ症状、軽度、中等度の気分障害、不安障害、強迫性障害、解離性障害など: それぞれの名称で呼ばれるか、不安障害以降のものは神経症性障害と呼ばれる。

※ 不安神経症や強迫神経症は、かつては心因性精神障害とされていたが、障害(disorder)の扱いとなって以降、精神障害ではなく神経症性障害とされるようになった。

●外因性精神病(外因性精神障害)の下位分類

  ▽器質精神病: アルツハイマー型認知症、パーキンソン病による認知症、日本脳炎による精神病
  ・・・ICD-10のF00~F09からせん妄を除いたものにほぼ該当する。
  ▽症状精神病: せん妄、アメンチア
  ▽てんかん: 現在ではあらゆる精神病、精神障害に含まれない。
  ▽中毒精神病: アルコール精神病、覚せい剤精神病
  ・・・ICD-10のF10~F19にほぼ該当する。

●神経症

★(1) かつて、次の条件を満たす症状を指した。現在では放棄されている。不安神経症、強迫神経症、ストレス反応、神経衰弱など。単にノイローゼとも言った。
 1. 精神病(統合失調症、躁うつ病)よりも軽度であること。
 2. 精神病者と異なり、精神症状・身体症状をそれと自覚していること
 3. 器質性(外因性)の症状ではないこと。
 4. 症状発生の要因が心理機制により説明されること。(心因であることが確定的であること。)

※ 特に、DSMがIII以降に概念放棄の姿勢を明確にしている。(DSM-IVで名実共に全面的に放棄。)
 ただし、「精神病よりも軽度の精神疾患が存在することを認めない」という意味ではないので、注意すべきである。そうではなく、「存在するのは、神経症者ではなく、神経症性障害の基準を満たす者である」という意味である。名称と概念の変更が行われた主な神経症は、以下の通り。

 ▼神経症(ノイローゼ) →→→ 神経症性障害
  ▽恐怖症 →→→ 恐怖症性不安障害
  ▽不安神経症 →→→ 一部の恐怖症性不安障害、パニック障害、全般性不安障害
  ▽強迫神経症 →→→ 強迫性障害(なお、ICD-10では強迫神経症の名称が残る。)

●神経症性障害

★(1) 上記の神経症の総称、別称。
・・・日本の古い精神科医などには、患者との会話においては積極的に神経症・ノイローゼの語を用い、論文・診断名・統計・学会発表などにおいては神経症性障害を用いる医師もいる。
(2) 現在では概念が批判・忌避され、「障害」への表記・概念の変更が望まれるものとしての旧神経症。
・・・DSMがIV以降に積極的に採用。
★(3) (1)または(2)の態度における、恐怖症、不安障害、パニック障害、強迫神経症、ストレス関連障害、解離性障害、身体表現性障害、神経衰弱、離人症などの総称。ほぼ「精神病や精神障害ほど重度でない精神疾患」の意。
・・・ICD-10がF40-F48の総タイトルに便宜的に採用。
★(4) (1)または(2)の態度における、恐怖症、不安障害、パニック障害、強迫神経症、ストレス関連障害、身体表現性障害、神経衰弱、離人症などの総称。
(5) (1)または(2)の態度における、恐怖症、不安障害、パニック障害、強迫神経症の総称。ストレス関連障害、身体表現性障害、神経衰弱、離人症は除かれる。

※ 解離性障害を独立した分類と見ている学者・医師の場合、実質的に解離性障害を神経症性障害ではなく精神障害と見なしていることがある。
「トラウマに対する防衛機制の結果であることが確定または推定できることが多い」解離性障害を、「心因でありながら、原因を特定できず、トラウマに対する防衛機制の結果であると確定できない」(不安障害を代表とする)広義の神経症性障害から分離・独立させる姿勢は、DSMのIV以降にも見て取れる。さらにDSMは、IV以降、ICD-10では別扱いとなっている離人症や現実感喪失を精神障害に近似の重要な解離症状の初期または一環と見ている。
 ただし、実際には、SSRIやSNRIなど重大な気分障害と同様の薬物が、解離性障害者に対してだけでなく、その他の神経症性障害者に対しても処方されている。発達障害者やADHD者に対しても、しばしば同じ薬物が処方されている。
 気分障害、解離性障害、神経症性障害、発達障害、ADHDなどの分類は、臨床の場においては理想論であって、実際には同じ薬物がこれら全ての障害・疾患に対して処方されたり、同じ障害・疾患に対して異なる薬物が処方されたりしている。
 DSMは、IV以降も多くの問題点を抱えてはいるが、決して神経症性障害や発達障害に対する気分障害の薬物の積極的な使用を求めているものではない。その意味では、DSM-IV以降の理想は米国や日本の臨床現場においてあまり実現されていないと言える。

●精神疾病(しっぺい):Mental disorder

※ 日本ではあまり使用されない。中国においてしばしば使用される語。