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気分障害 : 精神病理学・精神疾患研究 : 岩崎純一のウェブサイト
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気分障害

精神医学的定義
精神医学的定義の概要
うつ病圏・神経症圏の分類の合理化の歴史
罹患者との個人的交流
「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流
参考文献

精神医学的定義

 ICD-10 : F30-F39 気分[感情]障害 (Mood [affective] disorders)
 DSM-IV-TR : 6 気分障害 (Mood Disorders)
 MeSH D019964 : 気分障害 (Mood Disorders)
 ◆【参考】コタール症候群・妄想性人物誤認症候群

精神医学的定義の概要

 気分障害は、ある一定の持続的な気分(感情)の変調による苦痛または苦痛と狂喜の反復、またはそれによる日常生活への支障を言う。現在では単極性障害(うつ病)と双極性障害に大別される。ただし、ICD-10とDSM-IV-TRで名称と概念は異なるものがある。

 一般に「うつ病」と呼ばれるものは、主にDSM-IV-TRに定められる精神症状と身体症状に近い。DSM-IV-TRでは、うつ病は大うつ病性障害に含まれる。

うつ病圏・神経症圏の分類の合理化の歴史

 世界保健機関(WHO)やアメリカ精神医学会(APA)は昨今、アスペルガー症候群、一般の自閉症、カナー型自閉症、高機能自閉症など、お互いがお互いに症状も発生原理も全く異なると考えられていたものについて、根本的な分類の見直しを試みており、これらアスペルガー症候群などの診断名・概念を廃止し、一連の連続体(spectrum・スペクトラム)を成す脳と身体の「傾向」であると見なす動きを強めている。

 ところがこれに対し、単極性障害と双極性障害については、従来は単極と双極とがお互いにいずれかの下位分類として理解されていたが、APAや反クレペリン派の主義主張の流れを汲む学閥を中心に、単極と双極とを峻別する主張が圧倒的大勢を占めるようになっているため、単に分類形式の上では、発達障害圏におけるスペクトラム概念の積極的な導入とは逆行した流れになっている。

 以下に、うつ病圏・神経症圏の分類の合理化の歴史を示す。

■単極と双極をめぐる年表

1900年前後・・・
単極性うつ病者にも「気分明瞭」な時期が周期的に観察されるほか、双極性うつ病者においても躁状態が優先的である者からうつ状態が優先的である者まで観察されるデータをクレペリン派が報告し、「循環精神病、気分循環症」の旧概念に「周期性の重視」を加味して「躁うつ病」と命名。単極性うつ病が双極性うつ病に含まれて、双極のうちの「うつ極」側に偏った状態とされ、躁うつ病の概念が確立。(クレペリン派。フランスなどヨーロッパ中心。)

1970年前後・・・
うつ病と躁うつ病の概念と名称が分離。現在の単極と双極が確立へ。(カルロ・ペリスらの研究グループ。アメリカとヨーロッパの両方の学閥を含む。)

1980・・・
アメリカ精神医学会(APA)が「神経症」概念をほぼ放棄。これにより、抑うつ神経症者が単極や双極やストレス障害、離人神経症者が解離性障害や離人症性障害に組み替えられるなど、分類の再編が行われた。本来は、双極スペクトラムや神経症スペクトラムを導入した際に、重症扱いする必要のない患者にまで薬物の使用が連続的に波及するのを避けるためで、当初はAPAの主張が優勢であった。

1980年前後・・・
さらに双極をいくつに分けるかが検討され、ほぼ双極 I 型障害、双極 II 型障害に分類。(ただし、このとき同時に、II型がI型の軽症の意味ではないことを精神医療従事者に警告。患者は症状の程度ではなく遺伝的要因の有無によって分類される。ところが、末端の医療従事者と患者との間では、重症度や犯罪率の高低として認識され始め、各医学会がたびたび議論・警告しているにもかかわらず、収集が付かない状況が続き、現在に至る。)

1980年代・・・
旧クレペリン学派・新クレペリン学派・アキスカルらなどのグループが単極と双極の二分法に疑念を抱いて、両患者の躁うつの周期と、気分障害ではないとされる旧神経症者の周期などの比較観察を開始。ただし、I型とII型の違いが重症度ではなく遺伝的要因の有無によることについては、クレペリン派も異論を見せず。

1983?85・・・
上記の旧クレペリン学派らが双極スペクトラムを提唱。旧ヨーロッパ型の気分連続性・循環性の気分障害観が一時期アメリカの大学でも研究される。神経症性うつ病者が双極と同じ発症過程を辿ったり、双極の患者が薬物使用時に神経症性うつ病と同じ症状を示したことなどによる。APAは、神経症概念の放棄の継続と単極・双極二分法の主張を崩さず、DSMの改訂に着手。

1987?2000・・・
APAがDSM-III-R ?DSM-IV-TRまでを改訂・発表。クレペリン派・アキスカル派のメンバーは、疾患分類・診断名の主要審査メンバーに含まれず。日本の精神医学界は、世界保健機関のICDとAPAのDSMを併用。神経症や双極スペクトラムは、診断名としては消滅したが、旧ヨーロッパ大学型の精神医学出身の医師などはなお継続使用するケースが見られた。

2000年代・・・
気分循環・周期性重視の流れを汲む双極スペクトラムの概念が再び下火となり、日本とアメリカではほぼ放棄され、薬物の使用やマニュアルとセットで単極・双極二分法に一本化される。周期の安定ではなく極値の落差(コサインカーブのyの値の落差)の短縮を優先するため、超短期変動の患者が日本やアメリカで急増する。

2013・・・
APAがDSMを大規模改訂、DSM-5を発表。廃止概念には、アスペルガー症候群、性同一性障害など。自閉スペクトラム症概念などを創設。双極スペクトラム概念の導入も初期に検討されたが、製薬会社や就業規則・雇用問題などを抱える企業などの反対により断念。APAや製薬会社に対し、福祉団体などが異論。医学界では議論がなお収まらず、ただし、日本とアメリカの医師および患者においては、ほとんどの臨床現場で双極スペクトラムを全面破棄、単極・双極二分法の指導・教育と診断が浸透している。

2014・・・
DSM-5の日本語訳出版。上記の「自閉スペクトラム症」などが正式に発表される。

 以上、このように、かつては双極性障害にも循環精神病や双極スペクトラムの概念があり、これまでの医学的知見・論文中で双極スペクトラムに含められたことがあるものには、神経症性うつ病、抑うつ神経症、心気症の一部、身体表現性障害の一部、全般性不安障害の一部、現在の双極性障害、境界性パーソナリティー障害などがあり、これらは全く別個の疾患としてとらえられるべきものではなく、重症度を問わなければいかなる人間でも単極・双極が示す躁うつ状態になることはありうるという見解が多く見られたが、精神医学そのものが方法論的立場として操作主義的になってからは、かえって気分障害においては非常に強い形でそれぞれの疾患に壁が設けられるようになったため、単極と双極の分断は、旧神経症・ノイローゼの概念の放棄と密接な関係があることになる。

 日本においては、高度成長期において「社畜」と呼ばれた人たちが陥った、「神経症」や「ノイローゼ」という日本人になじみ深い呼び名が診断名としては放棄されることになったため、労働問題を扱う厚労省(当時の厚生省)も、DSMにICDやフランス・ドイツ型の気分障害観を加味するという非常に工夫を凝らした指針を出していくこととなった。

 診断名や診断基準というものは、昨今見られるアメリカ精神医学会のOBによる暴露の事実を待つまでもなく、医学的事実を加味しつつも、それ以上に優先的に、製薬会社の意向、その時々の連邦政府の主要政党の見解、政治的動向、分類概念や診断名の決定権者や監修した医師団における白人・黒人・カラード(黄色人種など)の割合(人種差別の趨勢に基づきどの人種の医師やどの国の製薬会社に有利な診断名・診断基準を設定するかが争われるが、基本的に白人種の医師およびアメリカの製薬会社に有利な結果となっている)、ここ最近に起きたテロなどの世界的事件を起こした(精神異常とされる)過激派の人物・集団などに対する制裁的措置の強化の意向などが反映されるため、それらの情勢が変われば診断名や薬物の扱いなども変わるのである。

罹患者との個人的交流

 私自身が、児童期より哲学書が好きであり、思索に耽るたびに暗い気分になって行動が鈍くなるなどの傾向にあったため、気分障害は比較的早期から関心のあった精神症状である。もっとも、「気分障害」という名も知らず、単に「うつ」と呼んでいた頃であったが、その頃の「うつ」は神経症の「ノイローゼ」の意味をも含んだ語であり、そして現在でも、一般の日本人は「うつ」という語に極めて多面的な意味を込めているという印象を受ける。

 私はこのことについては「非医学的」であるとは感じないばかりか、現実に忠実な態度であると考える。実際に日本人のうつ病者は、医学的定義の「うつ病」と「不安障害」と「神経性障害」との重層的な症状を呈することが多いと感じる。

 また、昨今は「単極性」と「双極性」の明確な峻別が叫ばれる風潮にあるが、実際には、曖昧にしてもかまわないような連続的な症状の患者が無理矢理に「単極性」と「双極性」に峻別されていたり、逆に、「うつ病」や「不安障害」や「神経性障害」を診断された患者どうしのほうが極めて似ていて、十把一絡げに「双極性障害」を診断された患者たちの中に、実際は(異なるどころか)気分障害を含まない別の症状(人格障害など)ではないかと思えたり、そもそも気分障害ではない症状が「単極性」か「双極性」に入れられていたりしている人がいると思えることが何度もあったし、現在でもある。

 単極性・双極性障害については、双生児における同時発症率が高く、親子の同時発症率も高いとの報告が複数あることなどから、統合失調症と同様に先天性・遺伝性疾病である可能性が主張されることがあるが、そもそもそれらの症状が先天的であるとは、それらを先天的に持った人がいるという意味でさえなく、人間の受精卵期の本来的な事態であって、その中からやがて近代的な意志というものが立ち上がってくることで人間は自己を獲得したという意味であると考える。

 結局のところ、言えるのは「双生児間で発症のしやすさが同程度に高い」といったことのみであるし、双生児のほとんどが同じ親によって同じ環境で育てられる上、現在「医学的に正しい報告」とされているものは、その検証実験の設定などが症状の寛解を目指す弁証法的な宗教思想に立脚しなければ生じ得ないものであり、私が思い描く「うつそのものの非病理性(人や社会がうつ的存在でなくなることの病理性)」、すなわち「うつ者は結局のところ何も発症していない、という考え方」とは立脚点や着地点が異なる思想による主張である気がしている。

 病気のスイッチが入ることによってではなく、高次な自己の成長、確固たる個人性の発達という人間なりの無理難題がたたった状態を拒否して、その自己・個人性のスイッチを切り(いわばその人なりの健康状態に回帰しようとして)陥るのが、統合失調症やうつである気がする。

 私は交流を持ってきたうつ病者の方々の人柄に常々惹かれてきたが、しかしそれは、私も人である以上、個人的な好みからそのような心優しく礼儀正しいうつ病者を選んで交流してきたからだとも言える。

 海外にも日本にも、少数派ではあるが、「うつ」そのものをその人が生まれ持った本能の一つであると述べている学者や医者は存在する。私もずっとそのことを言い続けてきたし、そのことを感じさせてくれる「うつ」の方々に好感を持っている。

 ただし、一部のうつ病者については、容易に激高したり、自身を暗い気分に追いやった社会への報復を匂わせるタイプのうつ病者もいらっしゃり、メールでの交流があってお会いする約束になってもその日その場に現れなかったケースもあった。このような場合、診断を付けるなら、うつ病のような精神障害ではなく人格障害とするべきだったのではなかろうか。専門知識のある医師からすると、やはりうつ病としか思えなかったのだろうか。

 しかし、私が出会ってきたほとんどのうつ病者は、むしろ人一倍心優しい方々であったし、あまりに心が沈みすぎて布団から起き上がれなくなる方もいらっしゃった。

 うつ病者に最も言ってはならないのは慰めや叱責の言葉であるとはよく言われるが、本来、「うつ病」というのは行動障害ではない。むしろ、人一倍まじめに律儀に学校や職場に通ったり、ミスや過失を詫びるような礼節ある人の心がポキリと「折れる」ことで陥るのが、「うつ病」であると私は考える。私は個人的には、そのような人こそ、「病」としての「うつ病」ではなく、「うつ」であると思うし、それはニーチェの言った「ルサンチマン」なき「能動的虚無主義」の実践に近いと考えている。

「うつ病者」と診断された人のうち、知人との約束を守らなかったり、人の慰めを過剰に拒絶したりする場合は、気分障害ではなく、性格または人格障害であって、全くカテゴリが違う問題になってしまうと私は考える。

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「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流

 うつ病者の女性にも、岩崎式日本語の使用者がいらっしゃるが、うつ病になることで(寡黙になるなど以外の)言語障害に陥る人は皆無であると言えるから、あえて多用されているわけではなく、ほとんどの方と一般の日本語で交流している。元より岩崎式日本語は、解離性障害や統合失調症など、精神病・精神障害の症状の著しい女性を最重要のモデルとして制作している。

参考文献(精神疾患研究のトップページに挙げた文献以外)

Why We Get Sick: The New Science of Darwinian Medicine, Randolphe M. Nesse and George C. Williams, Vintage Books, 1994
Parker, Gordon; Dusan Hadzi-Pavlovic, Kerrie Eyers (1996). Melancholia: A disorder of movement and mood: a phenomenological and neurobiological review. Cambridge: Cambridge University Press.
Nesse R (2000). “Is Depression an Adaptation?”. Arch. Gen. Psychiatry 57 (1)
Carlson, C. Donald; Heth (2007). Psychology the science of behaviour (4th ed.). Pearson Education Inc.