サイトレイアウト切り替え
  • 主にデスクトップ向けのレイアウトに切り替える
  • 主にラップトップ向けのレイアウトに切り替える
  • 主にタブレット向けのレイアウトに切り替える
  • 主にスマートフォン向けのレイアウトに切り替える
  • 主に旧型モバイル向けのレイアウトに切り替える
ページ内移動

『新水無瀬恋十五首歌合』

春恋
裃ちの子
枕濃くさむしろうすき若草のむら残る雪のあとも消えつつ
青柳香織
うぐひすのむかしの春も忘られて朧月夜に花をしくかな
岩崎純一
春霞それと見し日の面影もあらしののちの玉ゆらの花

夏恋
裃ちの子
袖も恋もなほもひとへに夏は来し花散里のあとのにほひに
青柳香織
忘れめや忘れかたみの花かたみとまらぬ夏のぬぎし衣に
岩崎純一
移り香の夜半ぞひとへに思ひいづる青葉重なるつらきけしきに

秋恋
裃ちの子
秋の床まことの恋はあらねども蛍ゆゆしき面影の月
青柳香織
黒髪に秋来る夜半のその先に人の袖吹く風にならばや
岩崎純一
忘れめや我が袖よりも朝露のたまらで枯れし月草の花

冬恋
裃ちの子
いくとせの雪をわが身にたとへきぬ恋ふりし袖は色も残らず
青柳香織
逢ふことは恋に恋してうたた寝の枕の夢の霜枯れの花
岩崎純一
常永久にむすぶちぎりもこぼれつつやがて氷の道の菅の根

暁恋
裃ちの子
秋の色そればかり空にほの見えて袖にくまなき有明の月
青柳香織
別れには月と袖にてわかたばやむなしき恋の有明の空
岩崎純一
有明のかた敷く色を面影に知らぬ今はの心をぞ聞く

暮恋
裃ちの子
夕庭にほのかたらひし面影はむかしの夢に暮れし花かな
青柳香織
夕菜さへしをれし恋の人のためつみにつみても夢の夢かな
岩崎純一
上の空雲のひとへに重ねきて恋や初瀬のよその鐘の音

羇中恋
裃ちの子
むかし見しをばなたづねてたびまくら女波さびしきよるの涙に
青柳香織
思ひ人たびぢなかばにかかるとななびく心と髪の待つ夜に
岩崎純一
この旅路身のこがらしは埋め来し吹き返す袖に月を連ねて

山家恋
裃ちの子
山ぎはは人の心をうつすらんかりほのひまに見ゆる薄雲
青柳香織
来ぬ人のことのなぐさに重ねてきかりほのそとの山鳥の声
岩崎純一
海ならぬ里の我が身をいかに見るや松のうきねに峰の白雲

故郷恋
裃ちの子
ふるさとや心の奥にかへす袖はわが身ひとつになける鈴虫
青柳香織
ふるさとのねおびれし床のひとり身はとほき思ひの松風の声
岩崎純一
いかにせん心づからのよその身は雪ふるさとに残る枕を

旅泊恋
裃ちの子
窓見ゆる涙の月のくるしさよいくへにやどる水ぐきのあと
青柳香織
ぬぎすべす先にさらえのゆらのとやとまらぬ衣の袖のみなとに
岩崎純一
旅のけの庵の茅に風ふきて同じばかりの面影ぞ立つ

関路恋
裃ちの子
忘られていかにつたへん逢坂のせきとめあへぬ袖のけしきを
青柳香織
世の中は関なき道も心からかたみに露の別れあるとや
岩崎純一
もろともにふたたび須磨の袖へだて閉ざしかたしや関守の影

海辺恋
裃ちの子
うきまくら逢ふことなみのよるのそでにみをつくしてもみる目なきかな
青柳香織
うつりゆく花は忘れんはまゆふの心の色を海にながして
岩崎純一
我が涙かけじかけても消えわびぬ忘れがたみの貝の下燃え

河辺恋
裃ちの子
名取川いはせうつつの夢にまで見そめし人に恋を言はなな
青柳香織
わたらぬといひし人さへたのめつつ渡良瀬川の恋のながめは
岩崎純一
つつみあへず衣の下行く水にほひ上毛にうつる花の濡れ色

寄雨恋
裃ちの子
黒髪の上の空なるわが身よりたもとにかかる夕やみの雨
青柳香織
もみぢふるくれなゐ色の雨しづくくもりし恋のかごとばかりに
岩崎純一
衣々の忘れがたみに重ねてし身を知る雨の帰るさの雲

寄風恋
裃ちの子
面影をはらふ手だてはいたづらに風そふ雪もはやつもるなり
青柳香織
かげろふのほの見えし日の春風にいとどゆれても消えぬ面影
岩崎純一
白妙の身にしむ色の袖の風にかへすがえすも消ゆることのは

 ●『新水無瀬恋十五首歌合』全歌判(PDF版)