岩崎純一のウェブサイト > 精神病理学・精神疾患研究 > 統合失調症・妄想性障害
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統合失調症・妄想性障害

精神医学的定義
精神医学的定義の概要
シュナイダーの第一級症状
罹患者との個人的交流
「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流
参考文献

精神医学的定義

 ICD-10 : F20-F29 統合失調症型障害及び妄想性障害 (Schizophrenia, schizotypal and delusional disorders)
 DSM-IV-TR : 5 統合失調症および他の精神病性障害 (Schizophrenia and Other Psychotic Disorders)
 OMIM 181500, DiseasesDB 11890, MedlinePlus 000928, eMedicine med/2072 emerg/520, MeSH F03.700.750 : 統合失調症(精神分裂病) (Schizophrenia)
 ◆【参考】コタール症候群・妄想性人物誤認症候群

精神医学的定義の概要

 統合失調症は、かつて「精神分裂病」と呼ばれていた精神疾患の一群である。2002年8月に、日本精神神経学会の決議により現在の名称となった。

 注目すべきは、統合失調症を診断された者に共通するのは「連想分裂が主症状であること」であって、実際にはこの疾患は多数の疾患の集合体であると考えられている。すなわち、統合失調症は多数の疾患の総称として用いられている。

 最新のDSMなどにおいて、「統合失調症者が存在するのではなく、存在するのは統合失調症なる疾患の診断基準を満たす者のみである」旨が宣言されているように、ある単一の疾患を有する者を指しているのではない。

 しかし、このような精神医学の態度は、特に統合失調症について強調されてはいるものの、統合失調症に限らず、ほぼ全ての精神疾患に対する最近の精神医学の態度であって、ここでは便宜的に「統合失調症者」と呼ぶことが許されるし、実際にこの呼び方は頻用されている。

 当初、幻聴や妄想により人格崩壊を引き起こす精神疾患全般は、エミール・クレペリンによって「早発性痴呆(Dementia Praecox)」と呼ばれ、躁うつ病(ほぼ現在の双極性障害に相当)と共に二大内因性精神病を構成した。オイゲン・ブロイラーは、この早発性痴呆を新たな精神疾患概念の「スキゾフレニア(独:Schizophrenie 英:Schizophrenia)」として整理・提唱した。これが日本においては、明治期にドイツ語を元に「精神分裂病」と訳された。平成14年には、英語の訳語として「統合失調症」と改称された。

 ただし、その特徴的な幻聴や妄想から、ICDとDSMの両分類の誤差は小さく、ほぼ同じ精神病様態が「統合失調症」及びその近縁の妄想性・精神病性障害と定義されている。

 解離性障害と同様、悲劇的体験を契機として発症することもあると考えられているが、一卵性双生児の両者が統合失調症に罹患する率の高さなどから、遺伝的要因が疑われている。特に、「精神分裂病」と呼ぶ限り、もっぱら内因性の病理であった。

 実際に、ほとんど何の前触れもなく、通行人が自分を攻撃しようとしていると思い込む被害妄想、国家や巨大組織に電磁波盗聴を受けているとする注察妄想、自らを天皇・王族などの隠し子と信じて疑わない血統妄想、自らの思考が外界に漏れ出ているとする考想伝播妄想などが生じることがある。

 このように、統合失調症への「かかりやすさ」が遺伝的に決定されているとする説が主流であるが、しかし、遺伝的要因が全く疑われない精神障害、人格障害、行動障害などは現在では存在していないのも、また事実である。

 統合失調症の幻覚とは、主に「幻聴」であって、幻聴と妄想は患者を統合失調症とするに足るほどの特異な様相を呈するが、幻聴がなく幻視のみが体験される場合は、LSDなどの幻覚剤の服用や解離性障害による幻視がまず疑われる。

 日本における入院患者数第一位の疾患が統合失調症であることはあまり知られていない。罹患者は女性に多い。

 もっとも、冒頭で述べたように、多数の疾患の総称であることに加え、誤診や鑑別が困難であるケースが多く隠れている可能性は否定できず、気分障害、不安障害、発達障害などとすべき事例が多くあるようである。しかし、統合失調症であれば、これら他の障害の傾向は必ず有していると言えるし、逆にパニック障害、全般性不安障害、強迫性障害、アスペルガー症候群、統合失調型パーソナリティ障害など様々なカテゴリーで統合失調症と類似の症状が見られることが知られている。

シュナイダーの第一級症状

 統合失調症の主要な症状としてシュナイダーが提唱した以下の第一級症状については、解離性同一性障害や境界性人格障害の一部が同様の症状を呈するため、現在ではこれのみをもって統合失調症とすることは忌避されている。

(1) 自分の思考が反響して聞こえる思考化声(自分の考えている内容が存在しない幻聴となって聞こえる)
(2) 複数の人の対話形式の幻聴。(複数の人が自分についてうわさなどをしている声が聞こえる)
(3) 自己の行為を批評する幻聴(自分が何か行動や発言をしようとするとその行為を非難するような声が聞こえる)
(4) 身体への悪意ある行為(誰かに監視されている、誰かに命を狙われているなどと思い込む)
(5) 思考奪取をはじめとする思考領域の不特定の影響(自分の思考が他人に抜き取られ、知られてしまうと思い込む)
(6) 考想伝播(自分の考えは、周りの人に筒抜けになっている)
(7) 妄想知覚(関係ないものを無理に関連付けて考える)
(8) 作為体験(他人に自分の思考、意志、行動を操作されているという感覚)

罹患者との個人的交流

 私が初めて統合失調症者と交流を持つようになったのは、やはり共感覚を通じてであった。
 もちろん、統合失調症者が全員共感覚者であるはずはなく、逆もまたそうであるが、共感覚者の中に真正の統合失調症者がいらっしゃったことも確かであるし、一方で、共感覚を統合失調症と誤診されており、「共感覚」の用語・概念を知って初めて誤診に気づいた患者がいらっしゃったのも確かである。特に、「音に色が見える」といういわゆる「色聴」や絶対音感タイプの共感覚が、幻聴・妄想に準ずる症状とされたためであろう。

 このうち、いわば真正と言える統合失調症者の方々の姿・行動を拝見したり、体験を聞かせていただいていると、罹患の要因について心因・外因よりも内因のほうを優勢とするには躊躇される場合があった。発症の直前に資格試験の失敗、就職の失敗、詐欺被害などを経験していた場合が、その例である。

 こうして見ると、発症原因が明確なケースが多い解離性障害(被虐待経験などが原因)に近い症状も、患者によっては出ているわけである。「幻聴内容の聴取・記憶や妄想を別人格に担わせており、主人格の私は正常である」などと主張するケースに至っては、解離性同一性障害との区別がほとんど不可能であると感じたが、今でもこの方は統合失調症者として入院を続けている。

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「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流

 統合失調症は、解離性障害や気分障害と共に、岩崎式日本語を制作する上で最もよく参考にした症状である。なぜならば、しばしば「自分が自分でなくなっている」という言い方をされる統合失調症者にさえ、幻聴は母語で聞こえるからである。日本人の統合失調症者の多くは、幻聴を日本語で聞いているか、自分が修得した英語などの特定の外国語で聞いている。そして、幻聴内容や妄想を日本語やそれらの言語で記述、発話、報告するのである。

 このことは驚くべきことであり、統合失調症理解のための最重要のカギであると共に、少なくとも「サピア=ウォーフの仮説」ないし「言語的相対論」の「弱い仮説」の妥当性を認めるにあたり看過しがたい事実であるというのが、私の見解である。

 統合失調症者は、日本語を使うことができるし、そればかりか、精神科医でもない一個人のこの私が作り上げた特異な人工言語も使えるのである。つまり、統合失調症者は、「下等動物」ではなくれっきとした「文明人」なのである。またそれだけに、幻聴や妄想が幻聴や妄想であることを理解しないのに、私の岩崎式日本語の文法を理解した統合失調症者がいらっしゃったことは、私にとって大きな感動であったし、同じ人間として嬉しかった。

 このように、私が岩崎式日本語を通じた統合失調症者との交流で知ったことは、「人は、一度母語を獲得したのちに統合失調症に陥る場合、母語の文脈・文法において統合失調症になる」ということである。これは、「動物にも統合失調症に類する症状が散見される」との従来の報告とも矛盾しないと思われる。

参考文献(精神疾患研究のトップページに挙げた文献以外)

Carson VB (2000). Mental health nursing: the nurse-patient journey W.B. Saunders.
Gabbard, Glen O. (15 May 2007). Gabbard's Treatments of Psychiatric Disorders, Fourth Edition (Treatments of Psychiatric Disorders). American Psychiatric Publishing.
『精神分裂病の概念: 精神医学論文集』 人見一彦・笹野京子・向井泰二郎訳、学樹書院、1998年10月
『統合失調症?正しい理解と治療法』 伊藤順一郎、講談社、2005年
『心の地図〈下〉―こころの障害を理解する』 市橋秀夫、星和書店、1997年9月
『分裂病と他者』 木村敏、ちくま学芸文庫、2007