岩崎純一のウェブサイト > 精神病理学・精神疾患研究 > 人格(パーソナリティー)障害
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人格(パーソナリティー)障害

精神医学的定義
精神医学的定義の概要
罹患者との個人的交流
「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流
参考文献

精神医学的定義

 ICD-10 : F60 特定の人格障害 (Specific personality disorders)
 ICD-10 : F61 混合性及びその他の人格障害 (Mixed and other personality disorders)
 ICD-10 : F62 持続的人格変化,脳損傷及び脳疾患によらないもの (Enduring personality changes, not attributable to brain damage and disease)
 ICD-10 : F63 習慣及び衝動の障害 (Habit and impulse disorders)
 DSM-IV-TR : 16 人格障害 (Personality Disorders)
 DiseasesDB 9889, MedlinePlus 000939, MeSH D010554 : 人格(パーソナリティー)障害 (Personality Disorders)

精神医学的定義の概要

 人格障害は、従来の境界例(ボーダーライン・ケース)や精神病質(サイコパシー)を引き継ぐ概念で、精神病・精神障害・神経症性障害のいずれでもないが、偏った行動や思考によって本人が苦悩したり周囲の人間が巻き込まれたりしている状態を言う。多く女性で占められる。

 正式な訳語は「パーソナリティー障害」に統一されたが、「人格障害」の語を用いる医師も多く存在する。単に語感の違いによる使い分けで、異なる概念ではない。

 人格障害は、妄想性、統合失調症質、統合失調症型、反社会性、境界性、演技性、自己愛性、衝動型、不安性(回避性)、依存性、強迫性などに分けられるが、従来の境界例はこれらの多くを含むものであって、境界性人格障害のみを指すのではない。

 ただし、サイコパシーについては、このうち反社会性人格障害、衝動型人格障害を主に指し、ほぼ男性のみで占められる人格障害であり、さらに、日本の法学概念としては人格障害ではなく精神障害である。(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)

 DSM-IV-TRにおいては、人格障害をクラスターA(奇異群・odd type)、クラスターB(劇的群・dramatic type)、クラスターC(不安群・anxious type)の三カテゴリに分類しており、Aには妄想性、統合失調症質、統合失調症型、Bには反社会性、境界性、演技性、自己愛性、Cには回避性、依存性、強迫性と特定不能の人格障害が含まれる。

 クラスターAは、精神病である統合失調症や妄想性障害とまではいかないがそれらに近縁の症状を呈する人格障害であり、クラスターCは、不安障害や恐怖症や強迫性障害と密接に関連があることから、最もよくDSM-IV-TRの「人格障害」の概念を表明しているのは、クラスターBであると言える。

 一般の若者の間では、境界例全般ないし境界性人格障害とその近縁の性格・人格の様態が、俗称として「ボーダー」、「境界」などと呼ばれることがあり、DSM-IV-TRにおいて臨床上いっそう合理的な分類が成される以前には、日本の学校現場においても流行語のようになった。「私はボーダーなので、自分勝手です」などのように日常会話で使用されるが、精神病理学的には適切な言い方とは限らない。

 この場合は単に、「変わり者」や「何か悪いことをしそうな人」の意味で用いられているにすぎない。ただし、この使い方の全てが誤っているわけではなく、医師の診断においても、「ボーダーらしき状態」としか判断できないケースも少なくない。

 そもそも、人格障害者が「変わった性格の人」や「個性豊かな人」とは言えず、「人格の障害を持つ人」として問題にされている理由は、彼らがしばしば、情緒不安定、うつ症状、不登校、摂食障害、リストカット、脅迫、恐喝、暴力、殺人など、家族や周囲の人々を巻き込む事態や犯罪を起こすことが多いからであり、かつ、多くの場合そのことに自ら気付いたり苦悩したりしている点で、従来の「精神病」者ではないこともまた明白だからである。

 その意味で、人格障害は、個々人の性格の問題でもあると同時に、社会状況、文化、家庭環境を要因として生じる側面も大きいと言える。

 DSM-III-R以前には付録などに掲載されていたものの、DSM-IVやDSM-IV-TRからは除外された人格障害には、サディスティックパーソナリティー障害、自己敗北性パーソナリティー障害(マゾヒスティックパーソナリティー障害)、抑うつ性パーソナリティー障害、受動攻撃性パーソナリティー障害の四つがあり、学説の不統一や不和、人権団体からの反対などの多くの事情により、概念の継承や診断分類の正式な創設が断念されている。とりわけ、フェミニスト団体・女性人権団体からの反発は厳しく、これらのパーソナリティー障害概念そのものが女性蔑視であるといった主張が展開された。

【参考】
解離性障害
性関連障害

罹患者との個人的交流

 解離性障害、気分障害、不安障害の方々に比べれば、人格障害の方々との交流は少ない。あるいは、少ないというよりは、長続きすることが少ないと言ったほうがよいかもしれない。長期に渡る人間関係を嫌がったり、約束事を守れなかったりすることも、一部の人格障害者の特徴であると言えそうだ。

 しかし、人格障害の方々は、自分ではどうしようもないという悩み苦しみを抱えていらっしゃるのであり、本人の責任だけではない部分もあると思うのである。それは、摂食障害や性関連障害の項で書いた私の見解とほぼ同じである。

 すなわち、成長の過程で、「最低限、家族にだけは自分を認められたい」という、全くわがままと言えない、人として当然のささやかな希望が、まず打ち砕かれているケースがあまりに多すぎるのである。そこが最初から崩れているので、第三者である医師や友人やパートナーが何をどう言っても、「認められた気がしない」という反応になる。

 そうなると、第三者が介入する余地のない家族・家庭の問題であるし、実は、統合失調症などの「患者個人の」精神障害よりも「治りにくい」、長期的で重大な「複数人の」集団的性格障害であるとさえ言えると、私は思う。母娘そろって境界性人格障害である場合、実際にはICD-10の「F24 感応性妄想性障害」の下位に定義される「二人組精神病」である場合も多いと感じられる。

 むしろ私が関心があるのは、何度でも書くが、特に家庭の問題もなく、ごく「普通に」育った心温かく礼節ある人が、何の前触れもなくいじめに遭ったり、事故や災害に遭ったり、人の死に接したり、性的暴行を受けたりした際に陥った、解離性障害や気分障害や不安障害や人格障害なのである。

 この観点から言えば、かなりの性的暴行を受けていながら、解離性知覚麻痺や解離性同一性障害に陥らず、人格障害にとどまるような女性は、相当の精神力の持ち主であると考えられるのである。むしろ解離性障害に陥るのが「普通」だからである。

▼ 私がご相談を受けて交流してきた、精神・身体症状共感覚その他の特殊知覚・症状を持つ女性が入居者の多くを占める、シェアハウス型の女性寮のサイトです。
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 →→ ●精神・身体症状、共感覚、その他の特殊知覚・症状の解説の分担などについて

シェアハウス型特殊女性寮 コンフィデンシャル・レディース東京(Confidential Ladies Tokyo)

「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流

 妄想性人格障害、演技性人格障害、回避性人格障害の女性に、岩崎式日本語の使用者がいらっしゃる。

参考文献(精神疾患研究のトップページに挙げた文献以外)

Hickey, Philip. (2010-05-05) Personality Disorders Are Not Illnesses. Behaviorismandmentalhealth.com. Retrieved on 2013-04-16.
Widiger, Thomas (2012). The Oxford Handbook of Personality Disorders. Oxford University Press.
『臨床心理学』「パーソナリティ障害」 Vol.9 No.4 金剛出版、2009
『境界性パーソナリティ障害―疾患の全体像と精神療法の基礎知識』 小羽俊士、みすず書房、2009年1月