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岩崎純一のウェブサイト > 精神病理学・精神疾患研究 > 不安障害・恐怖症・強迫性障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)
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不安障害・恐怖症・強迫性障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)

精神医学的定義
精神医学的定義の概要
まじめさ・責任感の表出としての社交不安障害(SAD)
罹患者との個人的交流
「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流
参考文献

精神医学的定義

 ICD-10 : F40 恐怖症性不安障害 (Phobic anxiety disorders)
 ICD-10 : F41 その他の不安障害 (Other anxiety disorders)
 ICD-10 : F42 強迫性障害<強迫神経症> (Obsessive-compulsive disorder)
 DSM-IV-TR : 7 不安障害 (Anxiety Disorders)
 DiseasesDB 787, eMedicine med/152, MeSH D001008 : 不安障害 (Anxiety Disorders)
 DiseasesDB 33766, MedlinePlus 000929, eMedicine article/287681, MeSH D009771 : 強迫性障害 (Obsessive-Compulsive Disorder)

精神医学的定義の概要

 不安障害は、「過剰な心配、恐怖、反芻(はんすう)」の特徴を有する複数の精神疾患の総称である。主に、恐怖症(恐怖症性障害)、全般性不安障害、パニック障害の三つに分類されるが、狭義には全般性不安障害を中心とする一連の不安症状を指し、恐怖症、パニック障害、強迫性障害などを除く。最も広義には、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、複雑性PTSD(C-PTSD)や、PTSDやC-PTSDの原因となる悲嘆反応や複雑性悲嘆をも含む。

 いずれにせよ、ICD-10とDSM-IV-TRとで名称と概念が多少異なるが、ほぼ同様の分類を示している。

 恐怖症は広場恐怖、社会恐怖(社交不安障害やSADとも)などに、強迫性障害は強迫思考、強迫行為などに分類される。しかし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や悲嘆反応は、ICD-10では適応障害と同じく「F43 重度ストレスへの反応及び適応障害」に分類され(すなわち、狭義の不安障害ではない)、DSM-IV-TRでは不安障害に分類される。

 DSM-IIIより放棄された旧「神経症(ノイローゼ)」概念のうちの不安神経症、強迫神経症、恐怖症に当たるものが、現在の不安障害にほぼ一致する。すなわち、旧神経症から減算する形で現在の不安障害を定義すると、旧神経症から抑うつ神経症、心気症、ヒステリー、離人神経症を除くものが現行の不安障害であると言える。

 ただし、現在恐怖症(恐怖症性障害)とされているものがDSM-IV以降は旧恐怖症に必ずしも一致していない(旧恐怖症の一つであった社会恐怖は、現在は恐怖症よりも狭義の不安障害の一つである社交不安障害として、薬物療法が主眼に置かれるようになった)など、少なからず変更が見られる。

 しかし、大体のところは、現行の不安障害は旧神経症の不安神経症、強迫神経症、恐怖症を引き継いでおり、かつそれぞれ、恐慌性の不安神経症が現在のパニック障害に、強迫神経症の一部が現在の強迫性障害に、恐怖症の一部が現在の広場恐怖や単一恐怖に、それぞれ該当している。

 これに対して、抑うつ神経症は気分障害の一部に組み込まれ(特に気分変調性障害が近似概念)、また、心気症、ヒステリー、離人神経症は心気障害、身体表現性障害、解離性障害、転換性障害、離人・現実感喪失症候群に再編された(身体表現性障害、解離性障害の項を参照)。

まじめさ・責任感の表出としての社交不安障害(SAD)

 社交不安障害(SAD)は、人前や人ごみの中において、赤面したり、手足が震えたり、汗が出たりする不安障害を言い、重度になると外出や就業ができなくなるケースも見られる。

「ひきこもり」や「ニート」と呼ばれる層の中には、当初から自宅におりその期間が長期に渡ることで外出や就業に妄想的な恐怖を抱くようになったのではなく、外出時や就業時など社会との接点を持った時期にハラスメントやいじめを受けて社交不安障害を発症したがために外出や就業ができなくなった者が多く存在すると考えられる。

 社交不安障害は広義の不安障害の一種であり、症状は多種多様で、少数の知人の前では緊張しないが大勢の見知らぬ人の前では緊張するというケースもあれば、逆に、街中の人ごみでは緊張しないが同僚や学校の友人の前では緊張するというケースもある。ただし、最も一般的なものとしては、会議・研究発表・プレゼンテーションなど大勢の人に注目されている状況での発言時に激しく緊張するケースが挙げられる。

「社交不安障害」は、医学的には以下を満たさなければならない。(DSM-IV診断基準)

A. 良く知らない人々の前で注視されるかもしれない社会的状況、または行為をするという状況の、1つ以上に対する顕著で持続的な恐怖。
患者は恥をかいたり、恥ずかしい思いをするような形で行動(または不安症状を示したり)することを恐れる。
B. 恐怖している社会的状況によって、ほとんど必ず不安反応が誘発され、それはパニック発作の形をとることがある。
C. 患者は恐怖が過剰であること、または不合理であることを認識している。
D. 恐怖している社会的状況または行為を患者は回避しているか、そうでなければ、強い不安または苦痛を伴っても患者は耐え忍んでいる。
E. 恐怖している社会的状況または行為の回避。不安を伴う予期、または苦痛のために、その人の正常な毎日の生活習慣、職業上(学業上)の機能、または社会活動や他者との関係に障害が起きている。
また、その恐怖症があるために著しい苦痛を感じている。
F. 18歳未満の患者の場合、持続期間は少なくとも6ヶ月である。
G. その恐怖または回避は、物質(例:乱用薬物・投薬)または一般的な身体疾患の直接的な生理的作用によくものではなく、他の精神疾患(例:広場恐怖をともなう、又は伴わないパニック障害、分離不安障害、身体醜形恐怖、広範性発達障害、又は分裂病質人格障害)ではうまく説明できない。
H. 一般的な身体疾患や他の精神疾患が存在している場合、基準Aの恐怖はそれに関連がない(例:吃音症、パーキンソン病の振顫、または神経性無食欲症または神経性大食症の異常な食行動を示すことへの恐怖でもない)

 そもそもなぜ人間が不安になるのかと言うに、「自己」というものが認識・理解されている人間だけが不安になると言える。すなわち、重度の統合失調症者や自閉症者のように、「自己」・「自我」というものが脳に認識されていない場合は、「不安障害」で言うところの「不安」を感じているわけではなく、むしろ積極的に外出する人がいるのも、「他人から笑われるのではないかという不安感・苦痛感」が不安障害者よりも軽度であるか存在していないからだと言える。

 統合失調症は、「自己」を認める意志がないというのではなく、そもそも「自己」を認識する脳のはたらきが変容している状態である。自閉症は、そのはたらきが遅れている状態である。

「不安」だけでなく、「緊張感」や「恥の心」なども、「自己」ありきの概念であることに変わりはない。重度の自閉症者が単独での性行為を人前で行うことがあることからも、そのことがよく分かる。

 あるいは、親や先生による暴行被害を受けている最中や、戦争中などでは、椅子に座り机にひじをついて「不安」について考える時間などなく、まずは「生き延びる」ことを考えなければならない。DVや性暴力の被害者が、不安障害よりもPTSDや解離性障害になりやすいのは、そのためであると言える。

 従って、不安障害とは、「自己への認識」と「不安について考えるだけの自己の余裕」という二つの要素があって初めて発症する症状の一群であると言うことができる。

 この二つの要素を著しく強く備えた者が、より大勢の人の前でのプレゼンテーションを要求されたり、より高い社会的地位を与えられたりすると、時間的余裕の有無にかかわらず、常に不安感・緊張感・恐怖感を抱えるようになり、社交不安障害(SAD)を発症しやすくなっていく。

 ある意味では、社交不安障害者は、「自己」および与えられた社会的責任に対して忠実・誠実であるとも言えるのであり、現代社会(とりわけ就職活動という競争市場に置かれる若年層)において増加傾向にあることが必然である不安障害であるとも言える。

罹患者との個人的交流

 不安障害は、うつ病、解離性障害、統合失調症などあらゆる精神症状に見られるし、全く健康な人でも特定の予定や約束事、4や9や13などの特定の数字に著しい不安を感じている場合もあり、私の知人の場合でもそれは同じである。

 そもそも私自身が、大学入試やピアノ発表会や講演の前や最中に恐怖症や恐慌性(パニック)発作に近いものを体験したり、布団の敷き方がいつもと違うだけで眠れないといったことを体験したりしてきたのだし、そのような不安感や恐怖心や強迫思考を(特に苦痛を伴うような直近の予定がなくとも)人生の全般に渡って覚えて生きている人がいても、決して一笑に付すわけにはいかない。

 むしろ、あらかじめ苦痛を伴うことが判明している予定がなくとも全般性の不安や恐怖が生じる事実は、不安や恐怖というものが文明の産物である以前に生体の本能の産物であることを物語っている。不安障害に陥っていない全く健康な人々が(経済的に困窮していない限り)明日の食糧の危機に不安や恐怖を感じないことのほうが、文明の産物であることだけは確かなようである。

 社交不安障害については、「引っ込み思案の目立ちたがり屋」が陥りやすいという喧伝がなされる傾向にあり、そういう人もいらっしゃるとは思うが、そうとばかりは限らない。むしろ、「目立たなければならない状況に立たされた末、容姿や行動を笑われたり批判されたりしたことを契機に、引っ込み思案になった」ケースがかなり多く見受けられる。本当に目立ちたがり屋の人ならば、自己愛性人格障害になる。

 私が見た社交不安障害者の一例が以下である。

●街中・人ごみの中にいると、不安になったり、急にパニックになったりする。
●人前での発表が全般的に怖い。きちんと話せているかどうか、周りの人に迷惑をかけていないかどうかが気になる。
●電車・バスなどの交通機関の密閉性と騒音に対して恐怖がある。
●貧困家庭に育った友人・知人の話を聞いて以来、自分が物を食べ、生きているというだけで、誰かを貧困に追いやったり傷つけたりしているのではないかと思うようになった。
●職場の上司・同僚の激情・罵声・反社会的行動・不当な叱責に遭ってしまい、反論する勇気もなく、不安・恐怖心だけが残っている。
●元々、口の形などの影響から英語の発音が苦手で、授業中に先生から発表を指名されることを恐れていた。ある日、指名されて長文を読んだ際に、同性・異性を問わず友人たちからクスクスと笑われた。それ以来、鏡を見て長時間発音を練習したり、英語の授業があるというだけで手に汗を握ったり体が震えたりするようになった。

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「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流

 不安障害者にも岩崎式日本語の使用者はいらっしゃるが、言語障害がある方は一人もいらっしゃらないため、ほとんどの会話はむろん一般の現代日本語でおこなっている。岩崎式日本語をお使いになるのは、不安障害・恐怖症・パニック障害の対象となる出来事をご家族などに内緒で記述・言明するときのみであることが多い。

参考文献(精神疾患研究のトップページに挙げた文献以外)

Andreas Olsson and Elizabeth A. Phelps (2004). "Learned Fear of ‘‘Unseen’’ Faces After Pavlovian, Observational, and Instructed Fear". Psychological Science 15 (12): 822-828.
Wu, K.; Hanna, G. L.; Rosenberg, D. R.; Arnold, P. D. (2012). "The role of glutamate signaling in the pathogenesis and treatment of obsessive-compulsive disorder". Pharmacology Biochemistry and Behavior 100 (4): 726-735.
『不安障害の認知療法(3) 強迫性障害とPTSD』 ギャビン・アンドリュースほか 古川壽明訳、星和書店、2005年4月
『精神療法 特集 強迫性障害臨床の現在2』 Vol.35 No.6、金剛出版、2009