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コタール症候群・妄想性人物誤認症候群

精神医学的定義
精神医学的定義の概要
罹患者との個人的交流
「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流
参考文献

精神医学的定義

 以下の疾病単位の下位分類として様々な名称で定義される。多くが統合失調症の孫分類の各種妄想の定義に該当すると思われるにもかかわらず、現在の診断名としては「気分障害」が最も多く、その中でも単極性障害(うつ病)とされることが最も多い。

 ICD-10 : F22 持続性妄想性障害、F24 感応性妄想性障害、F25 統合失調感情障害、F28 その他の非器質性精神病性障害
 ICD-10 : F30-F39 気分[感情]障害
 DSM-IV-TR : 5 293.8  他に分類されない精神病障害[一般的診断を示す]、293.81 妄想型障害、293.82 幻覚による障害、295.70 分裂情動障害、297.1  妄想性障害
 DSM-IV-TR : 6 気分障害
 ◆【参考】統合失調症気分障害

精神医学的定義の概要

 これらの症状は、診断上は主に気分障害(特にうつ病)などとして扱われているものであるが、現在でも使用されることのある概念である。

コタール症候群 (Cotard delusion)

 強度の虚無主義的(ニヒリスティック)な妄想を特徴とする症状で、診断時には気分障害・統合失調症・解離性障害などとして診断される。1880年にフランスの精神科医J.Cotardが報告して以来、日本でも報告されるようになった。

 コタールをはじめ、欧米圏の精神科医らによる報告は、主にキリスト教(ないし一神教)信者、とりわけカトリック信者による原罪的な妄想が多いが(「全知全能の神の前にひれ伏すしかない罪深き自分は、元より生まれていないか、すでに死んでいるはずだ」など)、のち一般に、「自分には脳・神経・内臓が存在しない」、「自分はこの苦悩のまま永遠に生き続けなければならない」などの悲観的・永劫回帰的な妄想として知られるようになった。すなわち、属する文化・社会、信ずる宗教によって症状が異なっていると考えられており、「文化依存症候群」の一種とされることもある。

 以下に特徴的な症状を挙げる。

欧米圏の一神教信者のコタール症候群の妄想

「自分はすでに死んでいる」
「自分はまだ生まれていない」
「自分には脳・神経・内臓などが存在しない」
「自分はこの苦悩のまま永遠に生き続けなければならない(いかなる方法によっても死ぬことができない)」(不死妄想)
「自分は神が創造した人間のうち最も邪悪な作品である」(強度の懺悔・卑下)

カプグラ症候群 (Capgras delusion)
フレゴリ妄想 (フレゴリの錯覚・Fregoli delusion)
相互変身症候群 (Intermetamorphosis)
自己分身症候群 (Syndrome of subjective doubles)

 これらは全て、妄想性人物誤認症候群(妄想性同定錯誤症候群・Delusional Misidentification Syndrome)として知られる妄想群である。老齢期の妄想としての研究も盛んであるが、若年では、思春期の男女の児童に見られるほか、10代・20代の女性に偏って見られる。

 カプグラ症候群は、J.CapgrasとJ.Reboul-Lachauxにより報告された。単なる人物誤認ではなく、「替え玉妄想」と「被害妄想」を特徴とする。

 すなわち、肉親・知人・友人、あるいは動植物・自動車・日用品、ひいては都市・国家などが本物と入れ替わっており、本物はどこか別の場所に存在していると信じて疑わず、なおかつ本物より送り込まれたそれら替え玉家族や替え玉国家が自分を攻撃しようとしていると妄想する。

 ただし、稀に「替え玉妄想」と「被害妄想」のいずれか、または両方がない場合もあり、最も軽度のものでは「相貌失認」とほとんど区別が付かない。

 フレゴリ妄想は、P.CourbonとG.Failにより報告され、見ず知らずの他人を肉親や知人と錯覚する(または、肉親や知人の替え玉であると妄想する)症状を指す。カプグラ症候群よりも被攻撃・被害妄想が強い傾向にある。

 相互変身症候群は、自分以外の全ての人間は誰か一人(または数人)の人間が目まぐるしく変身を繰り返して演じているとする妄想である。

 自己分身症候群は、自分の分身がこの世のどこかに存在する(または、自分はこの世のどこかに存在する本物の自分の替え玉である)とする妄想である。

欧米圏の一神教信者の妄想性人物誤認症候群の妄想

「本物の私はどこかに別に存在する」
「私は夜になると毎日死んでしまっていて、翌朝になると私の替え玉が生まれて私になっている」
「私の家族は替え玉で、同じ顔をした本物の家族はすでに死んでいる」
「全ては演劇で、私が出会う多くの人々は、ごく少数の人々が毎日化粧や衣装を変えて演じているだけである」
「地球はまた別の場所にあって、ここは地球ではないかもしれない」

罹患者との個人的交流

 日本においては、私が知る限り、これらの症状の発症は目立って外因的・後天的な発症がほとんどであり、そのうちのほとんどが性的被害・暴力被害や、外見や行動の習慣に関するパートナーからの暴言に遭った女性による急性の発症であるように思われる。しかし、男性に全くいないわけではないだろう。

 コタール症候群の場合も妄想性人物誤認症候群の場合も、稀に妄想を自覚している場合があり、この場合は妄想に抵抗しようとして著しい苦悩を経験し、抵抗に疲労して自殺を図ることもあるようである。暴力被害などの目立った外因が見当たらない場合には、欧米と同様に宗教的信念が原因となっている場合が多い。

 ただし、カルト宗教的・新宗教的な信念とは異なっており、むしろ、いかなる宗教や自己啓発関連のセミナーやサークルとも無縁の生活を送り、周囲の人間の助けを借りようとせず、強い責任感を持って人生を送ってきた方々の発症例が多いように思う。

 また、この妄想は、ほとんどのケースで当人一人では止めることができていない。しかし、稀に自らの力で寛解することもあるようである。

 最近では、神経科医Vilayanur S. Ramachandranも『脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ』(訳 山下篤子、角川書店、2005)の中で紹介している。

私が交流してきた日本の精神病性障害患者に特徴的なコタール症候群の妄想

「私はすでに死んでいる」
「私はまだ生まれていない」
「私には性器・胸部・口唇部が存在しない」=性的被害に遭った部位を脳が無視
「私の頭や体は、それらの部位を虐待で殴打されたときに消滅した」=虐待被害に遭った部位を脳が無視
「私はこの苦悩のまま永遠に生き続けなければならない(いかなる方法によっても死ぬことができない)」(不死妄想)

私が交流してきた日本の精神病性障害患者に特徴的な妄想性人物誤認症候群の妄想

「本物の私はどこかに別に存在する」
「私の家族は替え玉で、同じ顔をした本物の家族はすでに死んでいる」
「私の部屋にあるぬいぐるみは、昔捨てたぬいぐるみの生まれ変わりで、私を呪うためにやって来た」
「私のかっこいいパートナーは、自分をだます(恋に落とす)ために宇宙軍から送り込まれた男で、同じ顔をした本物のパートナーは別の場所にいる」
「私の性器・胸部・口唇部は常に新品で、性的被害を受けたりパートナーに接触されたりして古びるたびに、性器製造工場などから新品が供給されている」

▼ 私がご相談を受けて交流してきた、精神・身体症状共感覚その他の特殊知覚・症状を持つ女性が入居者の多くを占める、シェアハウス型の女性寮のサイトです。
 女性に特有の症状・知覚については、寮生に解説をお願いしています。
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シェアハウス型特殊女性寮 コンフィデンシャル・レディース東京(Confidential Ladies Tokyo)

「岩崎式日本語」にまつわる個人的交流

 これらの症状を抱える方々は比較的、岩崎式日本語に親和性が高いようであり、同言語を積極的に利用しようとする日本人女性の中にこれらの症状を抱える方々がいらっしゃる。

参考文献(精神疾患研究のトップページに挙げた文献以外)

Cotard, Jules (1880). "Du Delire Hypochondriaque dans une forme grave de la melancolie anxieuse". Annales medico-psychologiques 38: 168-174.
Pearn, J. & Gardner-Thorpe, C (May 14, 2002). "Jules Cotard (1840-1889) His life and the unique syndrome that bears his name". Neurology (abstract) 58 (9): 1400-3.
Hirstein, William. "The misidentification syndromes as mindreading disorders." Cognitive Neuropsychiatry, 2010 Jan;15(1): 233-60.
Ramachandran, V. S. (1998). "Consciousness and body image: Lessons from phantom limbs, Capgras syndrome and pain asymbolia". Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences 353 (1377): 1851-1859.
"Capgras (Delusion) Syndrome". PsychNet-UK.
『脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ』 ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン、訳 山下篤子、角川書店、2005